「入国後講習施設」(通称、研修センター)と呼ばれる経営形態が登場する以前、業界歴20年前後の関係者の皆様は、技能実習生(→当時は外国人研修生)が入国する度に、公民館・商工会議所等を借りて1ヶ月間張り付きで講習に従事されていたと思います。
入国後講習は、配属後の技能実習生との関係性においても、監理団体が主導して実施することが最良の方法ですが、手間暇が発生する講習期間を金銭解決する手段として業務委託を選択する方が増加しております。
今回は「施設立地」「講習費用」「講習内容」「施設環境」「サービス」の観点より、選定のポイントを述べていきます。
1 「施設立地」
業務委託を行っても「完全丸投げ」はお勧めしません。入国時、講習手当の受け渡し、「本邦での円滑な技能等の修得等に資する知識」科目の講義、配属時などは、監理団体が実施する方が成果を発揮します。よって、監理団体職員の往来が容易な地域の講習施設を選択することが基本となります。
2 「講習費用」
「賃料」「人件費」「光熱費」以上のような経費の他に、会社経営に必要な納税関係、教材費・送迎費用を含むか否かなどにより講習費用は算出されております。ホテルのような1人1室ではなくても、1人あたり8時間の講習を実施する講師確保も想像していただければ、1泊あたり2,000円~3,000円(税別)が高額ではないことをご理解いただけると思います。
監理団体側の要望次第となりますが、平均すると1ヶ月60,000円~90,000円(税別)。金額に含まれないサービス内容の要求は現実的に難しい状況となりますので、追加費用の支払いか、要望対応が可能な講習施設を探すしかありません。
3 「講習内容」
「日本語」「本邦での生活一般に関する知識」「(一部略)法的保護に必要な情報」「本邦での円滑な技能等の修得等に資する知識」から構成されます。「日本語」に関しては、講師の日本語教師資格取得の有無、1教室あたりの人数確認がポイントです。
少人数開催を希望される方もいますが、入国状況により収容人数の変動もありますし、講習施設側の人件費問題もありますので、小学校・中学校時代の教室人数であれば及第点と言えます。
講習内容に関しては、毎日のように新規入国(入寮)が発生し、様々な送り出し国・送り出し機関より入国、個人的な能力差もありますので、使用教材での判別や留学校のような段階的指導が成果を発揮するとは限りません。特に留学生とは違い、出稼ぎ目的が強く、語学習得に意欲的ではない人材は、いかなる講習内容も日本語能力向上には結び付きません。
「本邦での生活一般に関する知識」に関しては、指導内容に大差はありません。配属された技能実習生の日常生活を観察し、問題発生が講習内容にあると実感された場合、送り出し機関・入国後講習施設へ確認した方が良いと思います。
ただし、個々の実習実施者(受入企業)でしか指導できない内容、有料ゴミ袋の種類、ゴミ出しの日時、通勤経路指導などもありますので、配属日翌日から実習を開始するのではなく、通訳を含めたオリエンテーションの機会は必ず設けるようにしましょう。
4 「施設環境」
衛生的な施設であることは重要ですが、至れり尽くせりの充実した環境が良いとは限りません。
送り出し機関における教育施設→入国後講習施設→実習実施者の流れの中で、実習実施者の環境が最も悪い状態と判断されるような環境であれば、配属早々、技能実習生は不満を漏らします。入国前より厳しい教育を受けている技能実習生に対し、過保護な環境の入国後講習施設を利用すると、返って「質」を下げて配属することになりますので、入国後講習施設の指導方針、施設環境は実習実施者との環境比較において判断する必要があります。
5 「サービス」
送迎、預貯金口座開設、健康診断実施など、業務委託契約書には記載されていない監理団体実施業務の要望があると思いますが、「送迎」(入国・配属)と「講習手当の受け渡し」に関しては入国後講習施設へ委託せず、監理団体で実施することが成果を上げやすいです。
期待に満ち溢れた日本への入国。面接を実施した監理団体・実習実施者ではなく、初めて出会う入国後講習施設の職員の出迎えは、自身への期待、愛情の低さを敏感に感じ、SNSを通じて外部に監理団体・実習実施者の酷評が拡散されることもあります。
監理団体・実習実施者は日本の「家族」であると信じる技能実習生の期待に応えない行為は金銭解決しない方が良い部分です。
「どこと組むかでは無く、誰と組むか」営業行為を行う送り出し機関、監理団体、入国後講習施設は何かしらの競争力に劣る苦し紛れの状況とも言えますので、以上のような選定ポイントの中から信頼できるパートナーとなる入国後講習施設をお探し下さい。
外国人受入適正化協議会 ~SAVE~ 森田