みなさまは、送り出し機関における「入国前講習」の場で、実際に何をしているかご存じでしょうか?
その内容について一部ご紹介します。
◆日本語教育
当然ながら各国、コマ数や時間割に違いはありますが、出国までの期間中、“日本語教育”がメインで進められます。
多くの送り出し機関では監理団体に対して、月次報告書が送られていることでしょう。
その内容は、送り出し機関との信頼関係で変わりますが、特に習得状況の悪い実習生については、報告書を実習実施者と必ず共有するようにしましょう。放置していると、配属後に日本語の習熟度や、場合によっては条件面が違う等、無茶&無理な要求にも繋がりかねません(無理な要求に対しては、受け入れ決定前の説明の時点でリスクやデメリットについてどれだけ説明され、理解を得ているかで変わってきますので、ご注意ください)。
そして、習得状況のよくない実習生に対しては、送り出し機関と教育方法の修正を求める、あるいは、定期的にオンラインで本人と面談をし、やる気をだしてもらったり、別件での渡航時に直接面談をしたりする、等の対応が必要です。監理団体としても、空港や講習施設で顔を合わせてびっくりするより、ある程度、心の準備をしておけるほうが良いでしょう。
当然ですが、現地の日本語教師は、元実習生・元留学生等が多く、日本語教育や指導についての勉強をしていない方がほとんどであり、日本語教師として、決して専門的な知識を持っているわけではないことは認識しておいてください。日本人教師がいる送り出し機関であれば、その日本人のスキル次第で現地人教師のスキルにも差が出てきます。視察とともに日本人教師のスキル、対現地人教師に対する教育施策チェックもしておくと更に安全です(もちろんこれを評価できる方が視察に行ってください)。
◆法令・ルール・マナー関係
「失踪はダメ」、「妊娠はダメ」ということだけ、一方通行的な説明を行っている程度が多く、「どうしてダメなのか」、「デメリットは何か」ということまでかみ砕いて“考えさせている”送り出し機関は決して多くはありません。
12月末には、OTITにも実習生の妊娠に対する注意喚起が掲載されましたが、実際に起こった場合、対応に苦慮する監理団体・実習実施者は少なくないと思われます。入国前講習、入国後講習、定期監査時、ことあるごとに何度でも諭していくのが無難でしょう。
参考:技能実習生の妊娠・出産に関する制度の更なる周知と不適正な取扱いの確認について(注意喚起)
他にも、夜間の洗濯・掃除、ゴミの分別等々、ご近所トラブルになる問題も複数あり、全てを網羅するのは時間的に難しい面もある為、日本側としてこれだけは把握してから来てほしいという内容を事前にリスト化して指定しておくという対応もオススメです。
◆専門教育・実技
実習実施者で使用される専門用語、社則、寮規等の事前教育は各国送り出し機関が行っていると思われますが、進捗状況や覚えているか否かの確認は、入国前に最低一度は監理団体が行うことをオススメします。実技については、どの程度の機材で、どの程度の頻度で行えるのか・行っているのかの相談・確認をしましょう。
送り出し機関の教育施設で行えない場合、専門学校・短期大学の施設を借りて行うことも可能ですが、日本語教育の時間が減少したり、余分に費用が発生したりしますので、入国時期(学習期間)の調整、費用負担者の確認は必ず行ってください。
◆まとめ
ここまで紹介してきた項目全てに当てはまりますが、採用が決まったら、日本語も含め、その後の教育が手薄になってしまう送り出し機関もあるようです。また、一期生から二期生、二期生から三期生と続いていくにつれ、実習生の質が落ちたと感じる監理団体・実習実施者も存在するようです。
こうした事態にならないよう、送り出し機関に任せきりにするのではなく、監理団体が積極的に関与していく姿勢が必要です。
「仕事が増える…」と感じるかもしれませんが、約半年の間、何もせずに入国後に蓋を開けてびっくりするより、「え、なんでこんなにできない……?」となるより(配属後の仕事がより増えます)、事前に手間暇をかけておいたほうが、後々必ず楽になります。
外国人受入適正化協議会 ~SAVE~ 宮本