「入国後講習施設」(通称、研修センター)は制度上、開業における資格・条件など規定はなく、送り出し機関から実習実施者への中間地点に立ち、横の繋がりが全く無いと言っても過言ではない監理団体にとって、目から鱗が落ちるような情報を持ち、様々なノウハウ・環境を秘めております。
1 他の監理団体情報
やはり気になるのは他の監理団体の動き、タイムリーな情報。入国後講習施設では日々、入国・配属・お電話で、数多くの監理団体関係者とお話をする機会があります。
そこで話題となる雑談ですが、制度知識に長けていない入国後講習施設職員も、監理団体より愚痴・不満も含め、様々な会話を積み重ねると少しずつ制度を理解していきます。守秘義務がありますので、特定の監理団体・担当者の名前を口外することはありませんが、似たような話題となった際、思わぬ対応方法の良案、未然防止策が得られる場合もあります。
完全に丸投げではなく、入国後講習は足を運んだだけの成果が得られることも多い場所です。
2 送り出し国、送り出し機関情報
多くの監理団体では、視察選定ポイントも定まらない中、高額な費用を投じ、送り出し機関視察に出向かれていると思います。現地で用意されている風景は視察用の「サクラ」で、本来の姿でも無ければ、そこで見た人材と同じレベルの人材が入国してくるわけでもありません。その点、入国後講習施設では日々、複数の国から複数の送り出し機関が定期的に入国してきます。
技能実習生の良し悪しは、実習実施者の待遇により大幅に変わりますので、1回の入国では判断できません。しかしながら、特定の送り出し機関より、様々な実習実施者の人材を受け入れると、日本語能力、生活指導、性格面などの平均値が見えてきます。これが海外視察では得ることができない、本当の送り出し機関の「評価」です。
入国後講習施設の職員に良い印象を残す技能実習生の送り出し機関を聞き出すことは、現地視察よりも価値観があります。
昨今ではベトナムからインドネシアへの切り替えも加速し、今後切り替えを検討している監理団体では、様々なインドネシア人材の特徴を知り、実習実施者へも説明したい方が多いと思います。
入国後講習施設ではインドネシアに限らず多くの国の宗教上の対応や語学力、性格面などの情報を収集しておりますので、情報を得るならば遠くの送り出し機関より近くの入国後講習施設でしょう。より高い成果を得るために、ご利用の入国後講習施設とのパートナー関係を深め、積極的に情報交換する機会を設けることが有益だと思います。
3 制度情報
今秋に控える「技能実習制度の見直し」等に関しても、入国後講習施設では話題となっています。
“タラレバ”の話から、有識者会議に参加されている方からの又聞きの話まで、入国後講習施設には直接関係の無い内容でも監理団体関係者から聞かされる機会も多く、知り得ている情報が監理団体以上の場合もあります。入国後講習施設の職員は、その情報に対する優先順位までは分かりませんので、監理団体の聞き出し方次第では、実は重要な情報を引き出せるかもしれません。
4 入社前研修機能
技能実習生の入国後講習とは、企業の「入社前研修」と同等の位置付けになります。特に日本企業に就職する以前に、日本の社会生活に溶け込むための外国人材向けの講習は、技能実習生に対する義務的教育には限りません。制度関係者の中には、制度上義務化されていない高度人材・特定技能であっても技能実習生と混在させ、1ヶ月ではありませんが、1週間、2週間と講習参加を希望される方もいます。
同僚となる技能実習生が企業に在籍する配属早々多忙な現場では、十分な入社前教育が可能とは言い難いです。様々な事情が背景にはありますが、入国後講習施設との個別交渉で、日数・金額を相談し、該当人材が入国される際に預けることも検討の価値があります。
5 施設機能
入国後講習施設は外国人材が専用に宿泊し、多くの施設では24時間365日、常勤者が在籍しております。入国時に利用した入国後講習施設であり、お世話になった教職員が在籍する安心感もあるため、一時帰国、途中帰国時などの際に、帰国オリエンテーションの場として活用される方もいます。
入国後講習施設は実習実施者へ技能実習生を繋ぐ最終仕上げの場所です。そこには多くの情報と外国人材管理・教育のテクニックも蓄積されておりますので、監理団体は入国時に1ヶ月間預ける場所とだけ考えず、制度上重要な位置付けにある中継地点として、パートナー関係を結ばれることをお勧めします。
監理団体が入国後講習施設を選定するように、入国後講習施設側も、数多くの監理団体の中から優良なパートナー先の監理団体を選定しておりますので、双方に対等な関係であることが重要です。
外国人受入適正化協議会 ~SAVE~ 森田